4 『君の一番好きな表情』
君に逢った、帰りの電車の中で。
ぼくは、ボーっと君のことを考えていた。
君と過ごす時間は、あっという間に過ぎて。
いつも、物足りなく感じてしまうんだよね。
今日の君は、いつもと同じようにとても可愛くて。
ぼくは、ずっとドキドキしっぱなしだった。
そんな君の、どんな表情が。
ぼくは、一番好きなんだろう?
間違って、反対側の電車に乗ってしまったぼくは。
次の次の駅で降りて。
反対側のホームへと向かう階段を登りながら。
そんなことを考えていた。
笑った顔は、もちろん好きだし。
ちょっと動揺した表情も好き。
とにかく、全部が好きなんだけど。
やっぱり、あの表情が一番だよな……。
ぼくは、やっとたどり着いた反対側のホームの。
ベンチに腰掛けながら、思っていた。
ぼくが、一番好きな君の表情は。
やっぱり、ぼくの小説を読んでくれている時の表情なんだ。
ちょっと、すました君が。
真剣に文字を目で追って。
嬉しそうに、微笑む。
ぼくは、君の。
そんな表情が、一番好き。
そんな風に。
逢うたびに君を近くに感じてしまう、ぼくを。
どうか、許して欲しいんだ。
ぼくは、君と出逢えた奇跡を。
本当に、素直に感謝しているから。
そして。
こんな、幸せな時間が。
ずっとずっと続きますようにと、そう願いながら。
ぼくは、ゆっくりと目を閉じた。
ぼくが、一番好きな。
君の、あの表情を思い浮かべるために。
『君の一番好きな表情』
了