14
「こんばんは、ヒロキ……」
思いつめた顔で玄関先に立つ真希に、俺は優しく声を掛ける。
「寒かったろ!早く入って……」
「うん……」
赤いコートを着た真希が、カシミアのマフラーを外しながらハイヒールを脱ぐ。
リビングのテーブルを挟んで、俺は真希と向かい合う。
しばらくの沈黙のあと、真希がゆっくりと口を開く。
「……お姉ちゃんのこと……どうするの? ううん、どうしたいと思ってるの?」
「俺は……もう無理だと思う……このままじゃ、ふたりとも不幸だよ……」
「わたしも、そう思うよ……早く結論を出して欲しいと思ってる」
「あぁ……年が明けたら、代理人を立てるつもりだ……申し訳ないけど、はっきり決着をつけないと……」
ずっと目を伏せていた真希が、そのとき俺の目をじっと見つめた。
「お姉ちゃんと別れて、ヒロキはどうするの? 好きな人いるんだよね?」
「えっ? どういう意味?」
「ううん、ごめんなさい……」
俺は、真希の気持ちを計りかねていた。
真希が、俺を心配したり世話を焼くのは。
単に、俺たちが同じような立場だからに違いない。
もし真希が、俺に好意を寄せてくれているとしても。
俺が、真希を愛してしまっていたとしても。
俺たちは、前には進めない。
真希には、大好きな男が居て。
こんな俺が、真希を奪うことなんて出来ないから……。
俺は、そんな気持ちをはぐらかすように真希に言った。
「もうすぐクリスマスだね……真希は、彼とデートどこ行くの?」
「わたしね……大好きな人とは、クリスマスに一緒に居られないかも……」