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美弥は俺に、いつもこう言った。
「だって、仕方ないでしょ?お互い様なんだし……」
確かに、そうだった。
妻との離婚話は、未だに進んでいない。
妻に対する愛情も未練も既になかった。
だけど、それ故に俺は落ち着かなかったのだ。
こんな中途半端な状態では、誰かを真剣に愛することなんか出来ない。
俺は、そんな風に考えていた。
美弥は、俺にとって便利な女だ。
そして美弥と過ごす時間は、間違いなく俺にとっての幸せだった。
だけど、それ故に。
俺は、だんだん苦しくなっていたんだ……。
そんなことを考えているうちに、恵比寿駅に着いた。
今日は、もう家に帰るかな……。
……まぁ、連絡くらいはしてやるか……。
俺はケータイを取り出して、真希に電話を掛ける。
「もしもし?ヒロキ!仕事終わった?ご飯食べた?」
真希の明るい声に、俺は苦笑いする。
「あぁ、食べたよ……あんまり心配しないでくれよ。大丈夫だから、さ!」
真希の明るい声が、いつも俺を癒やしてくれる。
「ねぇ……お姉ちゃん、何か言って来た?あれから連絡ないの?」
「あぁ……。良いじゃないか、その話は……真希だって、楽しくないだろ?」
俺は真希に、そんなことを言いながら。
恵比寿の、明るい夜空を見上げた。
俺にとって、妻側の唯一の味方が真希だった。
妻の妹である真希は、いつの間にか俺の世話を焼くようになっていた。
そして俺は、きっと。
真希を愛しているのかもしれない。