81


有香!?



ぼくは、さらにペダルに力を込めて。


坂の頂上を目指して、自転車のスピードを上げる。



もう一度、頂上を見ると。


もう、有香の姿は見えなかった。



有香……待ってくれ!有香!!



ぼくは、ひたすらに自転車を漕いで。


坂道の頂上を目指す。



頂上にとどり着いたとき。


そこには、誰もいなかった。



幻か……。



道の両側には、ガードレールがあるだけで。


辺りを見回しても。


そこには、誰もいなかった。



ぼくは、ゼーゼーと切れる息を深呼吸で静めながら。


先にまだある、坂道をじっと見据えた。



坂道の頂上を過ぎると。


その先は下り坂になっている。



そして、その先には。


いま登って来た坂よりも、長くてキツそうな坂道が見えていた。



ぼくは、自転車から下りて。


ガードレールに座って考えていた。



ぼくは、塩沢湖まで行くべきなのだろうか?


あの旅で有香と行った、塩沢湖に……。



ふと空を見上げると。


青空に、真っ白な雲がひとつ。


ゆっくりと流れていた。