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軽井沢駅の駅前を右折して。


国道18号線を、ぼくは自転車で走る。



以前、有香と一緒に走った道に独りで自転車を走らせながら。


ぼくは、考えていた。



有香が、ぼくに伝えたかったのは。


一体、どんなことだったのだろう?



有香は、ぼくにヒントを残してくれたけれど。


結局ぼくは、その意味が分からないでいた。



軽井沢中学を右手に見ながら。


ぼくは、塩沢湖を目指して交差点を左折する。



ぼくは、いま。


自分自身に、自信を無くしていた。



有香の気持ちを理解できない自分。


そして、ぼくの目の前に現れた有香が。


結局は、ぼくを置いていってしまったということ。



塩沢湖が近づくにつれて。


坂道がきつくなって行く。



ぼくは、一番軽いギアに落として。


立ちこぎをしながら、坂道を登っていく。



ハァハァと、息が切れる。


体中から、汗が噴出す。



ぼくは、坂道の頂上をじっと見据えて。


ペースを落とさないように、ペダルに力を込める。



そのとき、坂道の頂上に。


有香の姿が見えた気がした。