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「待ってくれ!有香!」
ぼくは、そう声を出そうとしても。
なぜか、声は出なかった。
有香を探すように、手を伸ばしたぼくは。
そのまま、真っ暗な闇の中に落ちて行く……。
体をビクッと震わせながら。
ぼくは、目を覚ました。
夢か……。
そうだよな……。
ぼくは、両目を両手でこすりながら。
ふぅ、とひとつ息をついた。
窓の外を見ると。
新幹線は、ちょうど高崎駅を発車するところだった。
そして、ぼくは。
さっきまで見ていた夢のことを考えていた。
確かに、ぼくは。
有香との未来を、ちゃんと考えてなんかいなかった。
それは、有香のことを愛していなかった訳じゃなくて。
自分に、自信がなかったからなんだ。
でも、そんなぼくは。
有香からしてみたら、自分のことを。
本気で愛しているとは、思えなかったに違いない。
ぼくは、有香との未来を約束するする自信がなかった。
それは、今だって同じことだ。
ぼくは、目を閉じて。
これからどうするべきかを考えていた。