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ぼくは、夢を見ていた。



軽井沢のアウトレットを歩きながら。


ぼくは、有香の手を優しく取った。



有香は、ちょっとハニカミながら。


ぼくの目をじっと見つめて。


楽しそうに微笑んでいる。



「ねぇ、ハル。わたし、いつかハルと軽井沢で暮らしたいな……」



有香は、そう言いながら。


ぼくの胸に飛び込んで来た。



「そうだね、有香……。ふたりで、のんびり暮らしたいね」



そう言った、ぼくに。


有香は、ちょっと寂しそうにこう言ったんだ。



「ふたりきりは、寂しいよ……」って。



ぼくは、ちょっと不安な気持ちになって。


有香を抱き締めながら言った。



「ふたりじゃイヤなの?有香……」


「……あたし、家族になりたい。ハルと、私たちの子供と家族に……」



ぼくは、そんな有香の言葉に。


どう答えていいのか迷っていた。



ぼくは、有香を幸せにする自信がなかった。


いや、それはちょっと違う。



有香と将来を共にすること。


そして、有香と家族を作るという。


そのことに、自信がなかったんだ。



何も答えない、ぼくに。


有香は、急に悲しそうな顔をして。



ぼくの手をすり抜けて。



そして、ぼくの目の前から消えたんだ。