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ぼくが、エスカレーターを駆け上がって。
3階に顔を出したとき。
有香は、出国ゲートに入る列に並んでいた。
「有香!待ってくれ!ずっと捜していたんだ!」
ぼくのそんな声を聞いた有香は。
一瞬、ブルっと肩を震わせて。
しかし、そのまま出国ゲートに入っていく。
どうして振り向いてくれないんだ、有香!
どうして……。
ぼくは、出国ゲートに消えていく。
有香のうしろ姿を見つめていた。
お願いだ、有香……。
どうして君は、ぼくの目の前に現れて。
だけど、するするとぼくの手をすり抜けるように。
そうやって行ってしまうのだろう?
振り向いてくれ、有香!
ぼくは、いま。
有香に伝えたい想いがたくさんあるのに……。
そのとき。
有香が、突然ぼくのほうを振り向いた。
有香……。
出国ゲートを挟んで。
ぼくと有香は、久しぶりに見つめ合っていた。
有香は、悲しそうな表情で。
ぼくの目をじっと見つめていた。
そして、有香が。
ゆっくりと口を開く。