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ホテルに帰った、ぼくは。


コンビニで買ったパンを、梨ジュースで無理やり胃に流し込んだ。



確かに腹はへっていたが。


食欲があるわけでもない。



ぼくは、いま。


不思議な気持ちだった。



もちろん、有香を捕まえられなかったという。


がっかりとした気持ちはあるけれど。



それでも、間違いなく。


ぼくの目は、有香の姿を捉えたのだ。



明日の午後に。


ぼくは金浦(キンポ)空港で、有香を待つ。



たぶん、有香は。


午後に、空港に現れるだろう。



そう信じることが出来るからこそ。


ぼくは、そんなに不安な気持ちじゃなかった。



ベッドに寝転がった、ぼくは。


ゆっくりと目を閉じて考える。



有香は、市場で。


ぼくの姿を見たのだろうか?



もし、そうだとしたら。


きっと、有香はぼくの気持ちを分かってくれるはずだ。



そして、明日。


空港で待つぼくを見た、有香は。



きっと、ぼくの胸に飛び込んでくれるはずだ。



ぼくは、そばにあった枕をギュッと抱き締めながら。


そんなことを考えていた。