58


南大門市場(ナンデムンシジャン)から、明洞(ミョンドン)のホテルに向かって。


ぼくは、トボトボと歩く。



東京に比べると、少しうす暗い夜道を歩きながら。


ぼくは、ずっと考えていた。



ぼくが見た、有香は。


ただの幻だったのだろうか?



いや、でも……。


それは、違う。



ぼくは、確信していたのだ。



あれは、間違いなく有香だった。



有香は、間違いなくソウルに来て。


そして、間違いなく南大門市場にいたのだ。



これから有香が泊まっているホテルを捜すのは。


無理だと思っていた。



有香が、ぼくより一日早くソウルに入ったとしたら。


2泊3日のツアーならば、明日帰国するはずだ。



だから、ぼくは。


明日、金浦(キンポ)空港で有香を待ち受けるつもりだ。



仁川(インチョン)空港の可能性も、もちろんあるが。


ぼくは、有香が金浦空港に現れる気がしていた。



ぼくの予想は、間違いなく当たる。


それは、ぼくが有香と過ごした時間がそうさせてくれるのだ。



きっと有香は、ぼくの。


そしてぼくは、有香の。


お互いが考えていることが分かるから。



ぼくは、いま。


そう信じることが出来たんだ。