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南大門市場(ナンデムンシジャン)から、明洞(ミョンドン)のホテルに向かって。
ぼくは、トボトボと歩く。
東京に比べると、少しうす暗い夜道を歩きながら。
ぼくは、ずっと考えていた。
ぼくが見た、有香は。
ただの幻だったのだろうか?
いや、でも……。
それは、違う。
ぼくは、確信していたのだ。
あれは、間違いなく有香だった。
有香は、間違いなくソウルに来て。
そして、間違いなく南大門市場にいたのだ。
これから有香が泊まっているホテルを捜すのは。
無理だと思っていた。
有香が、ぼくより一日早くソウルに入ったとしたら。
2泊3日のツアーならば、明日帰国するはずだ。
だから、ぼくは。
明日、金浦(キンポ)空港で有香を待ち受けるつもりだ。
仁川(インチョン)空港の可能性も、もちろんあるが。
ぼくは、有香が金浦空港に現れる気がしていた。
ぼくの予想は、間違いなく当たる。
それは、ぼくが有香と過ごした時間がそうさせてくれるのだ。
きっと有香は、ぼくの。
そしてぼくは、有香の。
お互いが考えていることが分かるから。
ぼくは、いま。
そう信じることが出来たんだ。