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ぼくは、必ず有香を見つけ出すことが出来る。
今の、ぼくは。
そう強く信じることが出来ていた。
悪いことを考えたら、それが現実になる。
それが、ぼくのジンクスだった。
だけど、今は。
良いことを考えたら、必ず叶うんだって。
そう信じることが出来たんだ。
有香を捜して歩くうちに。
ぼくは確信したことがある。
足が棒になったって。
ぼくは今、幸せだった。
その気持ちは、間違いなく。
本物だと思えたんだ。
有香が、誰か他の男といたとしても。
ぼくは、もう気にしない。
もしも、有香の気持ちが。
その男に向いてしまっていたとしても。
ぼくは、必ず有香を取り戻すことが出来るんだ。
ぼくは、信じるしかなかったんだ。
ぼくの、有香への愛と。
有香の、ぼくへの信頼のかけらを……。
市場の中を何回も往復しながら。
ぼくは、有香を捜し続ける。
時計の針は、午後9時を回ろうとしていた。
有香は、もう。
ここには居ないんだ……。
ぼくは諦めてホテルへ帰ろうとした、そのとき。
50メートルほど先の路地に。
確かに、有香の姿を見た。