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ぼくは、ジャケットの内ポケットから。


2枚目の写真を取り出した。



その写真は……


抜けるような青空の下に、道路を挟んで小さく宗礼門(スンネムン)が見える。


道路を行きかう車の手前に。


腰に両手を当てて宗礼門を見ている、ぼくの後ろ姿が写っていた。



ぼくは、ゆっくりと歩いて。


有香がその写真を撮った場所に立つ。



あの時と違っていたのは。


通称『南大門(ナンデムン)』と呼ばれている宗礼門が。


放火によって、焼け落ちてしまっっていたことだ。



2008年2月10日に、南大門は。


放火によって石造の門を除いた。


木造部分のほとんどが焼失してしまったのだ。



韓国の国宝第1号の南大門が、焼け落ちる……。



そんな様子を、ニュースの映像で見ながら。


ぼくは、そのとき声を失った。



そして、今。


無残に焼け落ちた南大門を目の前にして。


ぼくは、再び声を失っていた。



「形あるものは、みな壊れる……」


ぼくは、そんな言葉を思い出していた。



2年前に、有香と見た南大門。


それが、今は。


すっかり、形を失っていた。



ぼくは、その写真と同じように。


腰に両手を当てながら。


ボーっと、南大門を見つめ続けていた。