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「アジュマー、イゴヂュセヨ(おばさん、これください)」
ぼくは、メニューを指差しながら。
片言の韓国語で、チョンボックチュック(アワビのおかゆ)を注文する。
1万ウォン(約1,000円)というのは。
現地では、かなり高い値段だろうか?
たぶん、高いんだろうな……。
でも、アワビが入ってることを考えればそうでもないか……。
あれっ?
前来たときも、同じようなことを考えたような……。
そんなくだらないことを考えていると。
おばさんが、料理を運んで来た。
出てきたコップの水には、口をつけずに。
ぼくは、おかゆと一緒に出てきたキムチを。
チョッカラ(鉄箸)で食べる。
ちなみに水を飲まないのは、腹を壊したくないからだ。
生水は、やはり気をつけたほうがいい。
そして、ぼくは。
有香と、この店に来たときのことを思い出す。
有香とぼくは、あの日もこのおかゆを食べた。
スプーンに乗せた、熱々のおかゆを。
有香は、フーフーと冷ましながら。
一口食べて、にっこりと笑ったっけ。
「韓国に来て良かった!」って、言いながら……。
ぼくは、いつの間にか。
思い出し笑いをしていた。
少しだけ、胸の痛みを感じながら……。