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思いのほか、夜景は暗かった。


まるで、ぼくの心のように……。



ぼくは、窓のカーテンを閉めて。


ベッドの上に転がった、スーツケースを開けた。



荷物を取り出しながら、ぼくは。


あの時の有香の言葉の意味を考えていた。



「離れてから気づくんじゃ、もしかして遅いのかもしれないよね……」



あの時から、有香は。


ぼくから離れることを考えていたのだろうか?



そして。


離れてしまったら、もう遅すぎるということなのだろうか?



荷物を整理した、ぼくは。


小さなデスクの上に、デニムのポケットに入れていた財布やキーケースを置いた。



デスクの上には、ルームキーが転がっていた。


今では珍しくなった、すぐにコピー出来そうな普通のカギに。


安っぽい透明なオレンジ色の、棒状のキーホルダーが付いていた。



ルームナンバーは……1203、か……。



3-(1+2)=0



簡単すぎるよな、有香……。



ぼくは、また。


有香の言葉を思い出していた。



「4桁の番号を、足したり、引いたり、掛けたり、割ったりして0にするの……0になるとね、幸せなことが起こるんだって。そこから物事が良い方向に進むの……ハルも0を探して……」



ぼくは、キーホルダーを手にとって。


じっと見つめながら、思ったんだ。



ぼくが、偶然この部屋に泊まったのも。


絶対に、意味があるんだって。