第3章  混乱のソウルへ……



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次の日の、午後8時過ぎに。


ぼくは、ソウルの金浦(キンポ)空港に降り立った。



ソウルに来ると、いつも思うんだ。


飛行機を出た瞬間に。


確かにニンニクの香りがするな、って。



長い間、海外にいると。


久しぶりに日本に帰ってきたときには。


間違いなく、しょうゆの香りがする。



それと同じことだ。


その場所には、その場所の匂いがある。



朝一番で会社に顔を出した、ぼくは。


適当な理由をでっち上げて、むりやり1週間の休みをもらった。



突然、早めの夏休みを取ると言い出した。


いかにもこれから旅に出るといった様子の、ぼくに。


上司は、怪訝そうな顔をしていたっけ……。



でも、そんなことはどうでもいい。



今のぼくにとっては。


有香を探すことが、一番大切なことだったから。



会社を飛び出した、ぼくは。


その足で、旅行代理店に向かった。



「お願いします!なんとか今日、どうしてもソウルに行かなければならないんです!」



旅行代理店のカウンターで、そう言ったぼくに。


窓口の女の子は、笑いながら言ったんだ。



「はい、大丈夫です。今日の午後3時半出発のツアーで間に合いますよ!」って。



午後3時半過ぎに。


ぼくは、羽田空港からソウルへと向かって飛び立った。



ANAのエコノミーシートに座って。


ぼくは、有香の行動を推理し始めていた。