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有香は、いったい誰とこの場所に来たのだろう?
ぼくは、また。
悪い考えをしようとする自分に、必死でブレーキを掛けていた。
ぼくを捨てた、その日に。
有香は、男とこの場所を訪れた。
きっと仕事だよ……。
そうに違いない……。
でも……。
それならば、ケータイを解約することなんて普通しないだろう。
やはり、有香は。
ぼくでない、別の男を選んだのだろうか?
でも、それはあんまりな話だ。
有香は、そんな女じゃない。
ぼくの知ってる有香は……。
だけど……。
ぼくは、有香の何を知っているというのだ?
有香のことをちゃんと知っている、と断言できない自分が。
ぼくは、歯がゆくて仕方がなかった。
でも、ぼくは。
有香を信じるしかない。
だって。
もし、信じることが出来なければ。
ここで全てが終わってしまうのだから……。
温泉を出たぼくは、浴衣で涼みながら誓ったんだ。
もう、一度。
ジンクスは自分で破るんだ、ということを。