35


「でも……? お願いします!でも、何ですか?」


ぼくは、そう言いながら佐藤さんをじっと見つめた。



「……確かに昨日、この方たちは、こちらにいらっしゃいました……」



えっ?



ぼくは、そんな佐藤さんの言葉を聞いて。


必死に悪い想像をしようとする、自分の心にストップをかけていた。



佐藤さんの反応を見る限り、有香と一緒に来たのは……やはり、男?



「この方、たち?って……彼女は、誰かと一緒に来たんですか?」


「えぇ……それは……男の方と一緒に……おふたりで、日帰り入浴をされました……」



困ったように話す、佐藤さんのそんな言葉に。


ぼくは、激しく動揺していた。



有香は昨日、間違いなくこの場所を訪れた。



しかも、ぼくではない男と……。



ぼくは悪い想像をしないように、必死で自分にブレーキをかけていた。



でも……。



ぼくは、それ以上のことを。


佐藤さんに聞く気が失せていた。



有香は、いったい誰とこの場所に来たのだろう?


ぼくを置いて、どんな関係の男と……。



それが理由なのか?



ぼくを捨てて、他の男と……。



ぼくと有香の、思い出のこの場所に……。



ぼくは、そんな悪い考えを。


もう一度、必死で否定しようとしていた。