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しっかし、暑いな……。
ぼくは薄青のハンドタオルで汗を拭きながら。
撮影を続けていた。
正午を過ぎた、日差しは。
いつの間にか、真夏のように強まっていた。
しかし。
それでも、ぼくを包む風は。
真夏に比べると、全然軽くて爽やかだった。
今日は、気持ちの良い日だ。
でも。
ぼくの心には、薄い雲がかかっていた。
有香のことを、考えないようにすればするほど。
ぼくの心の雲は厚くなって行くんだ……。
そんな思いを振り払いながら。
ぼくは、目的の場所までやって来ていた。
そこは。
有香と初めて逢った場所だった。
あのとき。
君は、マンホールの小さな穴に片方のヒールを落としていた。
焦ったように。
それでも冷静に、立ち尽くす君の姿を。
ぼくは、そのときボーっと見つめていた。
そして無意識のうちに。
そんな君の様子を、ぼくは一枚の写真に収めてしまっていた。