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何かを考えるように、腕組みしたサラリーマン。
台座に顔をうつ伏せる、女子高生らしき女の子。
そして、時計を見ながら貧乏ゆすりをしている若い男……。
それぞれが、それぞれの方向を向きながら。
それぞれの思いと、そして苛立ちのオーラを立ち上らせていた。
そして、その中心には。
何事にも動じないかのように、ゆったりと座るライオンの像がいた。
ぼくは、ライカメーターでFを素早く計って。
レンズの絞りをセットする。
ライカメーターが示した値よりも、少しだけ絞りを開けた。
ファインダーを覗いて、アングルを決めながら。
素早くピントの微調整をして、人差し指でシャッターのリリースボタンを押す。
柔らかい感触とともに、シャッターがチャッと小さな音を立てて落ちた。
デジタルカメラ全盛の時代に、フィルムで写真を撮る。
アナクロな趣味だと言われれば、確かにそうなのかもしれない。
少し前までは、当たり前だった行為が。
あっという間に、マイナーになってしまっていた。
だけど、ぼくはそんな行為にずっと魅力を感じていたんだ。
小学生のころ、初めて自分のカメラを手にしたぼくは。
白黒のフィルムを入れて、車や電車の写真を撮りまくった。
オリンパスペンというハーフのカメラは。
通常の半分のサイズで画像を記録する。
つまり、36枚撮りのフィルムで72枚以上の写真が撮れる代物だった。
いくら撮っても、まだまだ撮影できる。
子供のころの、ぼくは。
夢中になって、いろいろなものを撮影した。
小さなカメラの中のフィルムに。
無限に広がる世界を閉じ込めることが、出来るような気がしたから。