その15
ぼくのそんな言葉を聞いても、チカは何故か冷静だった。
「分かったよ、コージ……仕方、ないよね……このままじゃ続けられないよ……」
「うん、俺は……許せないんだよ!……嘘をついていた自分自身を……」
「うん、分かるよ……あたしも同じ……あたしも、自分が許せないから……」
チカは大きな瞳に大粒の涙を溜めながら、それでも気丈にそう言った。
ぼくは、ゆっくりと立ち上がる。
チカはぼくの手にすがろうとして、しかし、それを躊躇した。
「ありがとう……さようなら、チカ……」
ユージが何か言うのを背中で聞き流しながら、ぼくは急いで階段を駆け下りる。
店を出ると、雨は上がっていた。
ぼくは夜空を見上げて、溢れ出す涙をこぼさないようにした。
そしてぼくは、フラフラと渋谷駅に向かって歩き出す。
この街には、チカとの思い出がたくさんある。
この店や、この路地にだって……。
ぼくは分かっていたんだ。
本当はチカを離しちゃダメなんだって。
だけど、今のままチカと続けるなんて出来ないんだ……。
そしてぼくは、いつの間にかチカと出逢った場所に来ていた。
ハチ公の周りは、相変わらずたくさんの人でごった返している。
そしてぼくは無意識のうちに、人ごみのなかにチカの姿を探していた。
チカが居るはずないことなんて、分かっていたのに……。