その7
「もしもし?あぁ、俺……ユージ……」
「あっ、ユージ!……うんっ?どうしたの?何か声が元気ないよ?……調子悪いの?」
チカは、いつだってぼくを気遣ってくれる。
「ううん……全然大丈夫!……あのさ、明日の夜逢えるよね?」
ぼくは、無理をして明るい声でそう言った。
「うんっ!もちろん!だって明日はホワイトデーだしねっ!」
チカは楽しそうに、そう言った。
「あぁ、うん……。じゃあ、明日の夜8時に……どこにしようか?」
「うーんと、ね……じゃあ、渋谷!……ハチ公前に8時!」
「うん、分かった……チカ……あのさ……」
「話は、明日ゆっくり出来るじゃない……じゃあ、明日ね!バイバイ!」
そう言って、チカは明るい声で電話を切った。
ぼくは、もう一度ユージからのメールを読み返しながら考えていた。
ぼくは、チカを失いたくない。
だけど、ずっと嘘をついていたぼくをチカは許してくれるのだろうか?
不安が、ぼくの胸をじわじわと締め付けていた。
だけどぼくは、チカとふたりで本物の時間を確かに過ごして来たんだ。
だから、チカはきっと分かってくれる。
いつものような、ぼくの大好きな笑顔で、きっと許してくれる……。
その時のぼくは、そう考えようと努力していたんだ。
きっと、大丈夫だって……。