その5
全く、ややこしい話だよな……。
チカが好きになったのは、ぼくじゃなくてユージなんだ。
だけど、チカはぼくと、リアルに一緒の時間を過ごして来た。
だから、チカはリアルなぼくが好きなんだと思う。
自信がないわけじゃない。
だけど、チカの目に映るのは、コージじゃなくて、ずっとユージなんだよな……。
ぼくは、まるで東京の星だ。
自分という存在を見せたくて、光輝こうとしている。
だけど、街の明るい灯りに、その輝きは掻き消されてしまう。
チカとユージの少しの時間にさえ、きっとぼくは勝てないんだ……。
ぼくは運河の土手に座って、夜空の星を見上げながら、そんなことを考えていた。
最近、チカと一緒にいるのが辛いときがあるんだ……。
それは全て自分のせいなんだってことは、ぼく自身だって分かっていた。
だけど……。
ぼくは、そばに座っているチカの肩を抱き寄せて、優しくキスをする。
恥ずかしそうに微笑むチカのことを、ぼくは間違いなく愛している。
だからこそ、ぼくは複雑なんだ。
ぼくはユージではなくて、コージなんだから……。
チカに、いつ本当のことを話そうか……。
でも、話してしまったらチカは……。
ぼくは、ずっとそんな不安な気持ちを抱えながら、それでもチカと幸せな時間を過ごして来た。
とりあえず、まだいいか……。
ぼくはまた、そんないい加減なことを考えてしまっていた。
だけど、運命の歯車は少しずつ、確実に動き始めていたんだ。