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「……これは、難病と闘っている川崎藤香さんから届けられたメッセージです。皆さまからの募金のおかげで、藤香さんは昨日アメリカへ旅立ちました。きっと彼女は元気になって、必ず戻って来てくれると信じましょう……」


亜紀は、うっすらと涙を浮かべながら

しっかりとした声で、そう言った。


「藤香さんは、ある思い出を支えにずっと病気と闘ってきました。ある思い出だけを、支えに……」


亜紀は、全てを知っていた……。

そして、それを知った上でもぼくを愛し続けてくれたのか?


「藤香さんの思い出……それが、この写真です」


亜紀の言葉とともに、屋外モニターに古い写真が大写しになった。


ぼくは、その写真を見たとき

涙が、止めどもなく溢れ出すのを感じていた。


そしてぼくは、その時決意したのだ。


ぼくは亜紀と共に生きて行くのだ、と。


藤香が帰ってくる、その時に

ぼくは、亜紀と幸せに暮らしている。


藤香が、それを望むのならば

ぼくはもう、何も悩む必要はないのだから……。



ちょっと水平が傾いた、その写真には

左側にケヤキの幹と、日陰があって

右側には緑の草と、奥にはキレイな薄い緑色をした水面がある。


そして、その中央には

真夏の日を浴びた、藤香とぼくがニッコリと笑っている……。



ぼくは、ゆっくりとケータイを取り出して

モニターに写ったその写真を、ケータイカメラで撮影する。


涙に滲んだ、ケータイの液晶画面には

あの頃の、ぼくと藤香が楽しそうに笑っていた。



それは

ぼくたち、全ての未来を祝福するような

幸せな笑顔だった。




『藤香とぼくと、一枚の写真』





CopyRight by Hiroto Izumi 2007 Summer