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スタジオのマイクの前に座った亜紀が

ゆっくりと口を開く。


「思い出だけが、私の支えでした。そして、その思い出は……ずっと変わらないまま、私の心の中にあります……」


屋外モニターに大写しになった亜紀を、ぼくはボーっと見つめていた。

亜紀が、こんな風に番組をやっているのは知っていたが

ぼくは、そんな亜紀の姿を見るのは初めてだった。


亜紀って、キレイなんだな……。

ぼくには亜紀が、まるで知らない他人のように見えた。


「……その思い出だけを支えに、私は生きて来ました。そして、これからも……」


亜紀……どういうことだ?

ぼくは、亜紀の言葉に動揺していた。


「愛するという気持ちがあるから私は、あなたと一緒に居なくても平気……」


そうなのか、亜紀……。


亜紀は、そんな気持ちを伝えるために

ここに、ぼくを呼び出したというのか……。


「だから、私は独りでも大丈夫。これまでも、ずっとそうだったんだから……」


ぼくは、亜紀の言葉に我を失っていた。


亜紀にそんな思いをさせていたのなら

それは、すべてぼくの罪だ。


「……今、あなたのそばに居る人を大切にしてください。それが、あなたの本当の幸せだと思う……私は、必ず生きる。そして、今度は新しい思い出を作るから……お兄
ちゃん、心配しないでね……」


えっ?

ぼくは、そのとき

亜紀の言葉に、耳を疑っていた。


「亜紀さん、そしてラジオを聞いて私を応援してくださった皆さん、本当にありがとうございます。私は、アメリカに旅立ちます。必ず元気になります。本当にありがとうございました……」


ぼくは、一体何が起こっているのか分からずに

ただただ、混乱するばかりだった。