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品川駅港南口まで歩いた、ぼくは
エスカレーターを降りて
右手にある、円状に作られた大理石のベンチに腰掛ける。
冷たくて、気持ちが良いな……。
ぼくは、思いのほか冷静に
そんなことを考えていた。
ふと目を上げると
丸い大きな時計が見えた。
時計の針は、午後7時51分を指していた。
左手に目を移すと、大きなモニターが見える。
それは、LEDで作られた大きな屋外モニターだった。
誰だかよく分からないが
ミュージシャンのプロモーションビデオが映っていた。
ぼくは、モニターをボーっと見ながら考えていた。
もうすぐ亜紀が、この場所にやって来る……。
果たして亜紀は、ぼくに何を伝えるつもりなのだろうか?
根拠のない不安に、ぼくは
心が震えているのを自覚していた。
そして、ぼくは
亜紀との生活を思い出す。
ぼくのそばに亜紀が居てくれることが、当たり前になってから
もう、ずいぶんと長い時間が経っていた。
そして、それが当たり前のことだと
ぼくは、感じてしまっていたんだ……。
その時、突然
モニターに亜紀の姿が映った。