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仕事を早めに切り上げた、ぼくは

午後7時過ぎに会社を出た。


ゆっくりと渋谷駅に向かって歩く。

そして、渋谷駅から山手線に乗る。


いつものように、ドアのそばに立って

ぼくは、電車に揺られながら藤香のことを考えていた。


藤香は、アメリカに行ってしまった。

もしかしたら、もう二度と逢うことは出来ないかもしれない……。


そう思うと、ぼくは

今すぐにでも、藤香を追いかけるべきだと思う。

だけど……。


4年前に、ぼくの目の前から消えたのも

今回のことだって、きっとそうに違いないのだ。


藤香はきっと、ずっとぼくのことを想っていてくれた。


自分の病気のことを、ずっと伝えなかったのも

それは、全てが藤香なりの愛情だったのだと理解出来る。

しかし……。


ぼくは、葵の口から真実を聞いて以来

ずっと葛藤していた。


藤香の気持ちを考えたら、ぼくは

藤香を追うべきではないとも思う。


様々なことを全て放りだして、藤香を追うことを

藤香は、決して望みはしないだろう。


だけど、藤香はそれでも

本当は、ぼくにそばに居て欲しいのではないのだろうか?

いや、だけど……。


ぼくを乗せた電車は

いつの間にか、五反田駅に着いていた。