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しばらくの間、ぼくは
冷たい台所の床に座ったまま、放心状態でただ涙を流していた。
葵は、何も言わずに
ぼくの手を握って、そばに居てくれた。
そのとき
ぼくのケータイにメールが届いた。
藤香か?
ぼくは、急いでケータイを開く。
藤香からのメールが、届くはずがないことなんて
ぼくだって、良く分かっていたのに……。
メールをチェックすると
それは、亜紀からのメールだった。
亜紀、か……。
ぼくは、がっかりしながらも
そのメールタイトルを見たとき、胸がドキリとした。
Sub : 大事な話……
ひろ……
大事な話があるの。
明日の午後8時に、品川駅の港南口広場に必ず来て欲しい。
何があっても、必ず来てください。
亜紀
ぼくは、亜紀のメールの文字を
ボーっと目で追いながら、考えていた。
大事な話、か……。
亜紀は、ぼくと別れるつもりなのだろうか?
ぼくは、いま
一体、どうするべきなのだろう?
亜紀を捨てて、また藤香を追うのか?
それでは、また尚子のときと同じ過ちを繰り返すことになってしまう。
「お兄ちゃん、亜紀さんから? メール……」
葵は、じっとぼくを見つめていた。
「亜紀さんを離しちゃダメだよ! 絶対にダメだから!」
葵は、そう言いながら
ぼくの手首をギュッと握った。