42
「なぁ、葵……藤香は、俺に逢いたいって手紙をくれたんだ……」
「うん……知ってたよ……藤香ちゃんは、一生懸命手紙を書いてた……何度も、何度も書き直しながら……」
そうだったのか、藤香……。
ぼくは、葵の言葉に
また、激しく胸が痛んでいた。
辛かっただろうに……
藤香は、あんなキレイな字で手紙を書いてくれたのか……。
ぼくの口から、無意識に言葉が出ていた。
「藤香に逢いたかった……いや、俺に逢わせてやりたかった……そんな状態なら、尚更……」
葵が、苦しそうに口を開く。
「これは、内緒にしようと思ってたんだけど……やっぱり、話すね……藤香ちゃんは、お兄ちゃんに逢ったんだよ……ミッドタウンの前で確かに……」
「えっ?」
ぼくは、葵の言葉に混乱していた。
藤香は、ぼくに逢っただって?
どうして……
いや、そんなバカな……。
「どういうことなんだ? 教えてくれ! 葵!」
葵は、ひとつ大きく息をついて言葉を続ける。
「藤香ちゃんは、確かに待ち合わせの時間にミッドタウンの前にいた……車の中から、お兄ちゃんの姿をじっと見ていたんだよ……」
「そんな近くにいたなら、どうして……どうして逢いに来なかったんだ?」
「藤香ちゃんは、言ってた……お兄ちゃんに逢ってしまったら、またお兄ちゃんを苦しめてしまうって……今の自分の、こんな姿をお兄ちゃんに見せたくはないって……」
ぼくの目からは、いつの間にか涙が溢れていた。
藤香は、あの時
ミッドタウンのあの場所で、どんな気持ちでぼくを見つめていたのだろう?
藤香の気持ちを考えると
ぼくは、どうしようもなくやりきれない気持ちだった。