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確か、ぼくは…………

病院の、すぐ近くまで来ていたと思う。


ブレーキをかけるたびに

左手が、激しく痛む。


左のブレーキレバーは、後輪のブレーキだ。


何度もブレーキをかけているうちに

だんだんと左手には、力が入らなくなっていた。


急な坂道を、全速力で走り降りる。

CAT EYEのスピードメーターのデジタル表示は

時速60kmを超えていた。


このカーブを右に曲がると、すぐ病院だ。


薄暗い、緩いブラインドカーブを曲がる。


そのとき

目の前に、突然

真っ黒い、駐車中の車が現れた。



ヤバイ!


ぼくは、一瞬にして

背中にイヤな汗をかいていた。


ぼくは、無意識のうちにハンドルを右に切る。

体重を後ろにかけながら、両手でブレーキレバーを目一杯に引く。


しかし、もうぼくの左手には

ちゃんと力が、入らなくなっていた。