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ぼくは、藤香をゆっくりと抱き締める。


藤香は、ぼくのケガした左手を気遣いながら

ゆっくりと、ぼくの背中に両手を回した。


「お兄ちゃん……藤香ね…………藤香、お兄ちゃんのことが、ずっと大好きだったよ……」


「……俺もだ、藤香……もう離さないから……今度は、どこへも行くな!」


藤香は、うっすらと涙を浮かべた瞳を閉じて

ぼくの背中に回した手に、少しだけ力を込めた。


ぼくは、右手の親指で

こぼれ始めた、藤香の涙を拭った。


そして、ぼくと藤香は

初めてのキスを交わした……。




「お兄ちゃん! 大丈夫? しっかりして!」


気が付くと、葵が

台所のシンクの前で、頭を抱えてうずくまったぼくの

そばにいて、ぼくをしっかりと支えていた。


頭の痛みは、相変わらず酷い。

しかし、その痛みのたびに

ぼくは、少しずつ記憶を思い出していた。



ぼくは、間違いなく

4年前に、藤香と再会していた。


そして、今ハッキリと

忘れようとした、イヤな過去を思い出し始めていたのだ。