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うん? 亜紀、かな?


反射的に見た、壁の時計の針は

午後9時30分を指していた。


ぼくは、今日は段ボールを片づけるのを諦めて

そのまま、玄関に向かった。


ドアを開けると

そこには葵が立っていた。


「葵……。どうした?」

ぼくは、そんな間抜けな言葉を葵に掛ける。


「ひろの様子が心配だったから、来てみたの……どうしたのよ、お兄ちゃん!」

葵は、心配そうな顔でぼくの顔を見つめていた。


葵は、散らかった段ボールの様子を見て

顔色が変わっていた。


「あの写真を…………探していたの?」

「うん。あの写真が、無いんだよ! お前に撮って貰った、あの写真が……」

「何言ってるの? だって、あの写真は……」


その時、ぼくは

急に強烈な痛みを、頭に感じて始めていた。


「あの写真は、なぜ無いんだろう? 知ってるのか? 教えてくれ、葵!」


そう言いながら、ぼくは

無意識のうちに、フラフラと台所に向けて歩いた。


水道の蛇口を捻って、グラスに水を受ける。


その時、ぼくは

少しずつ、記憶が蘇っていくのを自覚していた。


まさか、そんなばかな……。


ぼくは、フラッシュバックのように

凄いスピードで頭の中に蘇る

藤香との記憶を、恐怖と共に感じていた。