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「じゃあ撮るよ! お兄ちゃんと藤香ちゃん、もっとくっついて!」

葵が、笑いながらそんな風にぼくと藤香に声を掛けた。


「分かったよ! じゃぁ、これでどう?」

ぼくは、藤香の肩をやさしく抱いて

自分のほうに、そっと引き寄せた。


一瞬びっくりしたように、ぼくの顔を見た藤香は

恥ずかしそうに、それでもニッコリと微笑みながら

カメラのレンズを見つめていた。


「うーん、いいねぇ! じゃあ撮るよ! ハイッ、チーズ!」


ちょっと水平が傾いた、その写真には

左側にケヤキの幹と、日陰があって

右側には緑の草と、奥にはキレイな薄い緑色をした水面がある。


そして、その中央には

真夏の日を浴びた、藤香とぼくがニッコリと笑っている。



あの写真は、どこに行ってしまったのだろう?

高校に入ったころの写真は、確かにアルバムにある。


あの夏、友達と自転車で旅をしたときの写真もあるのに。

あの写真だけが、見当たらない……。


そんなことを考えながら、段ボール箱を押入れにしまって

少しすると、亜紀が部屋に帰ってきた。


「ただいま! 今日も暑かったぁ! すぐご飯にするね! 冷やし中華でいい?」

亜紀は、仕事が早く終わったのが嬉しいのか

普段よりも、楽しそうに見えた。


「うん、お帰り! いいねぇ、冷やし中華! でも、今日早くて良かったね!」

ぼくは、そんな風に亜紀に声を掛けながら

台所にいる、亜紀のそばまでゆっくりと歩く。


錦糸卵を作るのか、ボールと卵を用意していた亜紀を

ぼくは、後ろからギュッと抱きしめた。