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CAT EYE(キャットアイ)のワイヤレス・サイクルコンピューターは
32km/hを表示していた。
目白通りを平均25km/hのスピードで
いつもよりも、ゆっくりとSCOTT CR1 TEAM ISSUEを走らせながら
ぼくは、逸る気持ちを落ち着かせようと努力していた。
これから逢う、藤香のことを考えても
どうせ、もうすぐ逢えるんだし仕方ないよな……。
それより、亜紀は今日は何やってるんだろう……?
ぼくは、新目白通りを明治通りに右折しながら
亜紀のことを考えることにした。
大学を出てから付き合う子は
いつも、ぼくよりも年下だった。
亜紀は、ぼくが付き合った初めての年上の女だ。
だから、なのかも知れないが
ぼくは、亜紀にいろんなことを甘えてしまっている。
例えば、何かを決めるときだって
ぼくは、亜紀の意見をまず聞いて
それから、しっかりと考えるようにしていた。
2年前の転職の時も、勇気をくれたのは亜紀の言葉だった。
「ひろなら、きっと大丈夫! 自分がやりたいように進んだらいいよ!」
以前のぼくとは、別人のように
ぼくは、亜紀を無条件で信頼していた。
何度も女に裏切られた、ぼくは
ずっと、簡単に女を信用したりはしなかった。
でも亜紀は、きっとぼくを裏切らない。
そんな風に、ぼくは
亜紀のことを、信じることが出来ていた。
亜紀との生活に、不満があるわけではない。
だけど、ぼくはそれでも
なんとなく亜紀に、漠然とした物足りなさを感じていた。
刺激が欲しいわけではないけど
亜紀との生活は、あまりにも落ち着き過ぎているのかもな……。
ぼくは、そんなことをぼんやりと考えながら
SCOTTを走らせていた。
続く!