藤香からの手紙が届いたのは、9日前のことだった。



「ねぇ、裕也……なんかオンナから手紙が届いてたよ……っていうか、藤香って誰?」



21時過ぎに、ぼくの部屋に帰ると

いきなり亜紀が、一枚の封筒をヒラヒラさせながら

じっと、ぼくの目を睨みつけた。


「藤香?……あぁ、田舎の幼なじみだよ。懐かしいなぁ! もう、10年も逢ってないよ……」


「……ふーん、そっか。ちょっと待っててね。すぐ食事出来るから!」

そう言いながら、亜紀は

楽しそうに、キッチンへと戻った。



2歳年上の亜紀とは、もう3年付き合っている。


偶然、あるパーティーで出逢ったぼくたちは

すぐに意気投合して

そして、すぐに愛し合うようになった。


練馬と新宿にある、お互いの部屋を行き来しながら

ぼくと亜紀は、落ち着いた生活を送っている。


この先亜紀と、どうなるかなんて

ぼくは、深く考えもせずに……。


亜紀は、いま

いくつかの地域FM局で、番組パーソナリティーをやっている。


元々は、雑誌の編集をやっていたが

2年前に会社を辞めてからは、フリーライターを始めた。


今では、何冊か単行本も自分の名前で出せるようになり

そのうちラジオで喋る仕事も、やるようになった。


ぼくは、亜紀の仕事に無頓着だった。


亜紀は、自分で決めて自分で進んで行く女だから。

ぼくが、とやかく言うのも失礼だしな……。


ぼくは、ずっとそんな風に

亜紀のことを、思っていた。