44 『君の笑顔が教えてくれたこと』

汐留から六本木に向かう電車の中で。

ぼくは偶然、君を見かけたんだ。


シートに座った君は。

ケータイを見ながら、本当に嬉しそうに笑っていた。


メールでも見てるのかな……。

君が、あんなに嬉しそうに笑うなんて。

いったい、誰からのメールなんだろう……。


ぼくは、そんな根拠のない想像をしながら。

独り、やきもきしていた。


げっ!


君は、いつの間にか。

ぼくに気づいていたみたいで。

ぼくと目を合わせた瞬間。

にっこりと笑いながら、ぼくに手を振った。


その笑顔が。

さっきの笑顔より、もっと嬉しそうだったから。

ぼくは、少しだけ安心したんだよね。


シートを立って、君が。

ドアのそばに立つ、ぼくのそばまで歩いて来る。


「ねぇ、今日の夕ご飯何がいい?」


じっと、ぼくの目を見つめる。

そんな君の瞳を見つめ返しながら。

ぼくは今、確かな幸せを感じていた。


そう。

少しだけ、自分の弱い心を責めながら……。


『君の笑顔が教えてくれたこと』