39 『色鮮やかな偶然の再会』

厚い雲が、日差しをすっかり隠して。

まるで、薄いグレーのフィルターがかかったように。

ぼくの目に映る、あらゆる街の色は。

ぼんやりと色を失っていた。


その朝。

人身事故の影響で、電車は遅れに遅れて。

やっとたどり着いた、品川駅のホームは。

人が溢れるほどの大混雑だった。


電車は、全然来ないし。

朝から、気分悪いな……。


ぼくは、そんなイラっとする気持ちを抑えるために。

ケータイ電話を開いて。

昨日、久し振りに君から届いたメールを見ようとした。


君とは、もう半年も逢っていない。

お互いに好意を持っているのが分かっているのに。

なかなか逢うチャンスがなくって……。


あれっ?

メールが来てる……。


ついさっき、届いたらしいメールを開くと。

それは、君からのメールだった。



Sub : おはょ!�

電車遅れてない?

わたしは、いま品川駅で足止めだょ!�


って、えっ?

君も、この駅にいるのか……。


ぼくは、急いで君へのメールを書き始めた。


ぼくも今、品川駅にいるよ!

逢えると嬉しいな!

どこにいる?

だって、ぼくは……。


そんなメールを送って、ふと目を上げた瞬間。


君がニコニコしながら、ぼくの目の前に現れた。


うわっ!

びっくりした!


「あはっ!見つけちゃた!久し振りだね……」

君は、ぼくの目を見つめて。

にっこりと笑う。


そのとき。

突然、メールの着信音が流れた。


君は、ゆっくりとケータイを開いて。

きっと、ぼくからのメールを読み始める。


そして。

「わたしも、逢いたかったよ……」

顔を赤らめながら、そう言った。

君の言葉を聞いた、瞬間。


色鮮やかな赤い電車が、ホームに滑り込んで来た。


そのとき、急に。

今までくすんで見えた、周りの色が。

ぼくには、鮮やかに見え始めたんだ。


ぼくは、君の大きな瞳を見つめ返して。

頷きながら、ゆっくりと君の手を取って引き寄せる。


やっと逢えた君に。

ぼくの気持ちを伝えるために……。


『色鮮やかな偶然の再会』