34 『君の住む街まで、あと……』

梅雨のさなかに、フッと顔を出す太陽は。

いつもよりも。

とても、ありがたい気がした。


新しい自転車を買ったばかりの、ぼくは。

雨の合間をぬって、自転車を走らせる。

そう。

君が待つ、隣の街まで。

あと10km!


時間さえあれば、ぼくは。

ずっと、君と話をしていたい。


時間さえ、あれば。

ずっと、君の瞳を見つめていたいんだ。


だけど、ぼくは。

自分にわざと、ブレーキをかけているんだよ。


だって。

君に、逢い過ぎてしまったら。


君のことを、きっと。

好きになり過ぎてしまうから。


ぼくは、自転車を走らせる。


君が待つ街まで、あと5km!


夏のような日差しが、ぼくを包む。

暑い……。


だけど、ぼくの心の中には。

爽やかな風が吹いている。


君と一緒に過ごす時間は。

これから、ずっと続く。


だけど……。


君の街まで、あと1km!


ぼくは、ペダルに力を込めて。

自転車のスピードを上げる。


やっぱり。

早く、君に逢いたいから……。


『君の街まで、あと……』