33 『最初から、もう一度』

見上げると。

見渡す限り、ぶ厚い雲が空を覆っていた。


どんよりとした雲。

それは、まるで。

今の、ぼくの気持ちと同じような。


昨夜の、君との言い争いは。

ぼくたちの未来を、壊してしまうほどの激しさで。


君は、もう。

ぼくを、受け入れてくれないかもしれないなって。

ぼくは、そのとき。

マジで、そんな覚悟をしていたんだ。


地下鉄に乗った、ぼくは。

いつものように、ドアのそばに立ちながら考える。


例えば、お互いが。

同じくらい、大切に思いやっていたとしても。

それに対する受け取り方は、当たり前だけど同じではないんだ。


だって。

気持ちのすれ違いなんて、簡単に起こるんだから。


ぼくが君のことを思って、したことだって。

それは単に、ぼくの。

独りよがりの押し付けなのかもしれないし、ね……。


地下鉄を降りて、地上に出ると。

相変わらず、ぶ厚い雲が空を覆っていた。


ぼくは、空を見上げて溜め息をつく。



そのとき、君からのメールが届いた。



Sub : もう一度


ちゃんと話し合おうよ。

こんなことで、私は。

あなたを失いたくなんてないから。



ぼくは、ひとつ息をついて。

君からのメールに、返事を書き始める。



お互いの気持ちを、理解するためには。

当たり前だけど、ちゃんと話し合うことが必要なんだ。


だから。

そのための努力を。

最初から、ふたりで始めたいんだ……。


君へのメールの最後に。

ぼくは、こう書いた。


ぼくも、君を失いたくない。

最初から、また始めよう。

出逢ったのように、最初から君を知りたい……。


君へメールを送った、そのとき。

一瞬、見上げた空の厚い雲のすきまから。

太陽の光が、ひと筋差した気がした。


そう。

確かに……。


『最初から、もう一度』