25 『偶然がくれた力』

電車の中で、逢った君は。

なぜか、時々。

じっと、俺のことを見つめていた。


何で!?


俺は、その理由を考えながら。

通勤電車に揺られていた。


何で、あの子は。

俺を見ているのだろう?


俺の髪が立っているから?

それとも、やっぱ。

俺が、カッコいいからかな?


……いや、それはないか。


勇気のない、俺は。

その理由を確かめたかったけど。

その視線に、気づかないフリをしていた。


君は、ギャルっぽいファッションで。

たぶん、歳は10代だと思う。


絶対に接点はないし……。

だけど。

そんな風に、見つめられてると。

さすがに、気になっちゃうんだよな……。


大門駅で電車を下りたとき。

「あの、スイマセン!」って。

突然、君が。

恥ずかしそうに、俺に声をかけて来た。


えっ!

俺は、半分固まりながら。

君に向き合った。


そして、俺は。

ドキドキしながら、君の次の言葉を待つ。


「あの……、小説書いてる方ですよね?……やっぱり!いつも読んでます!」


へっ?


俺は、予想もしなかった君の言葉に。

少しだけ、動揺していた。


こんなことって、あるんだ……。


そのとき、俺は。

正直、とても嬉しかった。


そして。

とても礼儀正しい、君に。

俺は、感動していたんだ。


「ありがとう!いつも読んでくれて……」

そう言った、俺は。

君にお礼を言って。

その場を離れた。


君や、みんなが読んでくれるから。

俺は、ずっと小説を書き続けることが出来るんだって。


俺は、君の後ろ姿を振り返って見ながら。

そう思ったんだ。


ありがとう、って。

呟きながら……。


『偶然がくれた力』