5 『君がメガネを外したから』


京急品川駅のホームにあるスープストックで。

ぼくは、のんびりとスープを食べていた。


今日の気分は。

ちょっといつもと違うものにしたくて。

韓国チゲとチャイニーズスープにしたんだ。


珍しく店内が空いていて。

ぼくは奥側のふたり席の、一番端っこのソファー側に座った。


まず、最初に。

ちょっと辛いチャイニーズスープを食べているうちに。

いつの間にか、店内はいつものように満席近くになっていた。


そのとき。

ぼくの目の前の6人掛けの円テーブルに。

君が座った。


ひとりで現れた君は。

まるで女教師のような、細くて赤いセルフレームのメガネを掛けていた。

そんな君は、とても美しくて。

ぼくは、君の動きをなんとなく目で追ってしまっていたんだ。


指輪は、してないな…。

ぼくより少し下くらいかな?

25くらい?


ぼくは、素知らぬフリをしながら。

そんなことを考えていた。


メガネを掛けた君は、もちろんキレイだけど。

メガネを取った君の顔も見てみたいな、ってぼくは思った。


だけど。

それって、かなりハードルが高い話だよな……。


だって、ぼくは。

君とは初対面なんだから。


そのとき。

君が、突然メガネを外した。


うわっ!

やっぱ、すげーキレイじゃん!


こんな寒い日だから。

店内だって、スープを食べるのにレンズが曇っちゃうよな……。

そっか、そっか。


ぼくは、超ラッキーなこんな出来事に。

きっと勇気をもらったんだと思う。


もし、このまま君を行かせてしまったら。

それはそれで、すぐに忘れてしまうようなことかもしれないけど。

だけど、そのときぼくは。

どうしても君と知り合いたいって、思ったんだ。


それから、ぼくは。

なんて君に声を掛けようかって、アタマをフル回転させていたんだ……。



そんな話を君にしたら。

「やっぱり。あの時、何かアヤシイって思ったんだよねー」と、笑った。


いま。

そんな君は、ぼくのそばにいて。

ぼくたちは、一緒に暮らしている。


何もしなければ、何も始まらないんだよな……。

なんて。

そんなことを考えながら。

ぼくは、君の肩を優しく抱いた。


『君がメガネを外したから』