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大きなクリスマスツリーを見上げながら。

俺は、沙樹子の肩を優しく抱く。


沙樹子は、俺に甘えるように。

俺の肩に、頭を預けた。


渋谷公園通りにある、イタリアンのレストランで。

俺たちは、ディナーをした。


小さなテーブルを挟んで、俺たちは。

かなり美味しいコース料理を楽しんでいた。


楽しそうな沙樹子の顔を見ながら。

俺は、そのとき思った。


俺には、何の不安もない。

ただ、俺さえちゃんと沙樹子を愛してさえいれば。

きっと、俺たちはずっと幸せでいられるのだ。


俺は、沙樹子にいつ指輪を渡そうかと考えていた。

食後のエスプレッソを飲むタイミングが。

きっと、一番良いのは分かっていた。

でも……。


さすがに、こんな満員のレストランでは。

あまりにも、気恥ずかしい。


俺は、バッグに忍ばせた指輪のことを考えながら。

もう一度、沙樹子の顔をじっと見つめた。


レストランを出た、俺たちは。

公園通りを、渋谷駅へと向かう。

もちろん、手を繋いで。


渋谷駅前の交差点を渡るとき。

沙樹子が、こう言った。

「この場所から、わたしたち始まったんだよね……」


俺は、沙樹子に頷きながら思った。