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結局、沙樹子の態度の原因は。

俺には分からなかった。


そのことを責めても仕方ないし。

俺は、そのことには触れずに。

普段通りに、沙樹子に接した。


沙樹子には、感情の波がある。

それは、人間ならば誰だってそうだろう。


俺は、そのとき思っていた。

そんなことくらい、俺しだいで何とかなる問題だと。


確かに、それは正しい。

それは、確かに俺しだいだったのだから……。


沙樹子の態度に、少し不安を感じながらも。

俺たちは、幸せな時間を過ごす。


1997年のクリスマスが近づいていた。


俺は、結婚情報紙ゼクシィを買って。

いろいろな情報を集め始めた。


ちょうど一年前に、俺は。

麻里恵のために、ダイヤの指輪を買った。


毎年、そんな指輪を買うのもマヌケな話だが。

俺は、沙樹子にちゃんと指輪を贈りたかった。


ある日、俺は。

銀座のはずれにある、小さな宝石店で。

0.5カラットのダイヤの指輪を買った。


麻里恵に買った、あの指輪は。

正月を過ぎた頃、近くの神社の賽銭箱に入れた。


沙樹子に贈る指輪は。

あの指輪よりも、少しだけ大きくて。

少しだけ、クォリティーが高いものを選んだ。