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沙樹子との日々は。

幸せに続いていく。

俺は、本当は。

麻里恵のことを、忘れようと努力していたのかもしれない。

でも、それは。

今の俺にとっては、一番大切なことだった。


俺は、また。

昔と同じ過ちを繰り返す訳にはいかないのだ。


もう二度と。

沙樹子を失いたくはない……。


そんな、ある日のことだった。

大学時代からの友人に誘われて。

俺は、沙樹子を連れて青山のクラブに行った。


大学時代、同じバンドでギターを弾いていた殿田が。

今さらながら、DJとしてデビューするというのだ。


殿らしいよな……。

俺は、30過ぎてからでも。

夢を叶えようとする殿を、羨ましく思った。


俺の夢は……。

そうだよな。

沙樹子を幸せにして。

そして、生まれて来るはずの子供を幸せにすることだ……。

俺は、そのとき。

そう信じていた。


19時からオープンした、そのパーティーには。

大学時代の仲間が、たくさん集まった。


「あぁ、紹介するよ。俺の彼女。よろしくね!」

俺は、久しぶりに逢った友達に。

沙樹子を紹介した。


そのとき。

俺は、少し違和感を感じていた。


いつもの沙樹子では、ない……?