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俺は、実は。

言うほど、自信がない訳ではなかった。


沙樹子に再び逢ってから、ずっと。

沙樹子は、俺をまた愛してくれると信じることが出来た。


いや、本当は。

俺は、信じるしかなかったのだ。


俺には、もう。

沙樹子しかいないのだから。


しかし。

まだ、沙樹子は。

俺との結婚に、承諾していない。


俺は、もう。

沙樹子に愛されるだけでは、嫌だった。


沙樹子と結婚して、幸せな家庭を作ることが。

俺の、夢になっていた。


その夢は、手を伸ばせば届くに違いない。

俺は、そう信じることが出来たのだ。


日が暮れた頃。

俺と沙樹子は、函館山に登っていた。


展望台へ向かう、ロープウェイに乗る。

進行方向とは、反対側に立って。

函館の街を見下ろす。


俺は、沙樹子を後ろから優しく抱き締めながら。

沙樹子の耳元で囁く。

「一緒に来れて良かった……」


沙樹子は、景色を見たまま。

沙樹子の前に回した、俺の手を。

ギュッと握った。


ロープウェイを下りて。

何段にも重なる、展望台へとスロープを歩く。


もちろん、俺と沙樹子の手は繋がっている。

そして、展望台の一番上に着いた。