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沙樹子は、俺の目をじっと見つめていた。

そして、しばらくしてからこう言った。

「ごめん……。ちょっと考えさせて……」


俺は、ゆっくりと沙樹子を抱き締めながら。

耳元で囁く。

「うん。待ってるから……」


俺は、きっと自信があったに違いない。

沙樹子と一緒に、再び過ごした時間は。

間違いなく、本物なのだと俺は感じていた。


そう。

本物の愛情で、俺は沙樹子を包んでいる。

だから、沙樹子は必ず応えてくれるはずだ。


いろいろな女を裏切って。

いろいろな女に裏切られた俺だが。

沙樹子だけは、どうしても信じたかった。

いや。

もう、沙樹子しか信じられないような気がしていた。


あれほど信じていた麻里恵に裏切られても。

俺は、沙樹子を信じようとすることが出来る。

その事実こそが、沙樹子が俺にとって。

本当に、特別な存在だと言い切ることが出来る証拠なのだ。

俺は、その頃から。

沙樹子の実家にも、よく遊びに行くようにした。

結婚したいという俺の意志を。

沙樹子のご両親や兄弟にも、知ってもらいたかったからだ。

「沙樹子……旅行に行かないか?」

俺は、沙樹子を旅行に誘った。