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俺は沙樹子との、そんな生活の中で。

きっと、思い込んでしまったのだ。


俺が、最後に選ぶのは。

間違いなく、沙樹子なんだって。


7年の空白は、俺たちに必要な時間だった。

そして、沙樹子はきっと。

俺を一番に考えてくれる。


俺は、そのとき。

もう決めていたのだ。

そう。

沙樹子と結婚するということを。


俺は、ずっと何かを残したいと思って生きて来た。

しかし。

結局、俺は。

未だに、何も残せていないのだ。


もちろん、これからだって俺は。

何かを残すために、悪あがきを続けるだろう。


でも。

今、一番残したいと思ったのは。

俺と沙樹子の子供だった。


何かを残す、という意味では。

これほど意味があることはない。


沙樹子は、もちろん子供が好きだし。

その点でも、安心出来る。


俺は、そのとき。

勝手に、そんなことを考えていた。


沙樹子との生活は、穏やかに続く。


冬の、ある日。

いつものように、沙樹子は俺の部屋に泊まりに来ていた。


俺は、沙樹子を抱き締めながら。

耳元で、優しく囁く。

「サッコ、あのさぁ……俺たち、結婚しないか?」