79

ゆっくりと沙樹子が近づいて来る。

ラケットが2本入った、大きなバッグを肩から下げて。


俺は、レンタカーから下りて。

沙樹子に近づく。


沙樹子は、にっこりと微笑んでくれたが。

やはり、その表情は堅い。


「よう!久しぶり!」

俺は、そんな風に気軽に声を掛ける。

7年という時間が、まるで嘘のように。

俺は、もう。

沙樹子を近しく感じてしまっていた。


「もう!何よ?ホントに!」

そう言って、沙樹子は笑う。


俺たちは、レンタカーに乗り込んで。

近くにある、テニスコートに向かった。

「何?これ、レンタカー?」と、沙樹子が訊く。

「あぁ、今クルマないし!」

「ふうん、そっか……」

「あぁ、駐車場高いし。もうカッコ付けるのもヤメた!」

「あははっ!大人になったじゃん!」

そのとき、沙樹子は。

初めて、あの頃のような笑顔を見せてくれた。


そして、俺たちは。

少しの時間、テニスをした。

沙樹子のテニスは。

普通の女の子レベルの腕だった。

俺は、手加減しながら沙樹子の相手をする。


テニスを終わりにした、俺は。

沙樹子に言った。

「なぁ、俺さぁ……沙樹子の家に行ってもいい?」