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沙樹子の家には、一度も行ったことがない。

しかし、あの頃良く。

俺は、沙樹子の家の近くまで。

沙樹子を、ポルシェで送って行ったものだ。


今は、一番安いレンタカーに乗っている自分が。

俺は、可笑しかった。


きっと、あの頃の俺は。

変に、カッコばかり付けていたんだ。

自分では、そうじゃないって思っていても。

きっと、そうだったに違いない。


歳を重ねるということは。

そんな変な気負いが、自然と抜けて行くものだと思う。

そして、そんな自然な気持ちで。

沙樹子と向き合えることが、とても嬉しかった。


あの頃、よく沙樹子を下ろした道路で。

俺たちは、7年ぶりに待ち合わせをした。

沙樹子は、携帯を持っていない。

だから、俺は。

待ち合わせ場所に着いてから。

携帯で、沙樹子の自宅に電話をかけた。

なんだか、懐かしいな……。

俺は、呼び出し音を聞きながら。

楽しかった、あの頃のことを思い出していた。


俺は、ドキドキしながら沙樹子を待つ。

そして、5分後。

いつも沙樹子の後ろ姿を見送った、あの路地から。

ついに、沙樹子が現れた。


沙樹子……。

俺は、あの頃より更に美しくなっている沙樹子に。

目を奪われていた。