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「久しぶり……突然ごめん。俺だよ……」

「えっ……ひろ、なの?どうしたの?」

沙樹子は、突然の俺の電話に。

少し動揺しているようだった。


それは、そうだろう。

7年ぶりに、突然。

昔の男から、電話が掛かって来たのだから。


「元気だった?……あのさ、急に声が聞きたくなってさ……」

「……なんかあったの?突然電話くれるなんて……」


沙樹子の声は、少し冷たい。

そりゃ、そうだろう。

沙樹子が、俺を許せないとしても。

それは、仕方がないことなのだから。


「実は、取材で沙樹子の家のそばに行ったんだ。火事があっただろ?」

「うん、あったよ火事。あそこにいたんだ……」

「あぁ、本当に偶然なんだけど。でさ。そのとき、沙樹子のことを思い出したんだ……」

「……ふーん。そうなんだ……」


そのとき、俺は。

間違いなく、沙樹子の声に癒されていた。

そして、俺は。

強烈に、沙樹子に逢いたくなっていた。

「あのさ……一度でいいから、逢って貰えないかな?」

「……えっ?何で?」

「決まってんじゃん!逢いたいからだよ!」

そのとき、沙樹子は少し笑った。

そんな、沙樹子の笑い声が。

俺に、勇気をくれていた。