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その頃の、俺は。

ロケ先で偶然出逢った、栞(しおり)のことが気になっていた。


栞は当時、まだ。

高校を卒業したばかりだった。


7つも年下の栞を。

俺は、妹のように扱った。

今ならば、7つ下なんて大したことはないが。

25歳の俺にとっては、18歳の栞は恋愛の対象外だった。


いや。

そのはずだった……。


俺は、あの時。

間違いなく、栞を愛してしまったのだ。


それでも、俺は。

栞への気持ちを、ごまかして。

沙樹子だけを愛そうとした。

しかし……。


結局、俺の気持ちに気づいてしまった沙樹子は。

俺から、離れて行ってしまった……。


沙樹子は、何も悪くない。

悪いのは、俺だ。


俺は、ずっと忘れていた。

沙樹子との、幸せな日々を思い出していた。


沙樹子は、子供が好きだったっけ。

小児科の看護婦だから、当たり前なんだろうけど……。


沙樹子は今、どうしてるんだろう?


そのとき、俺は。

強烈な感情が、湧き上がって来るのを感じていた。


沙樹子に逢いたい……。

そんな気持ちを、ずっと押し殺しながら。

俺はロケ車の窓から、流れる景色を見ていた。